ペルソナを設定するメリット

前回では、ペルソナの説明や選定する理由について説明しました。今回はペルソナを選定するメリットについて説明したいと思います。

採用したい看護師像の共通認識が揃う

前回、「看護師免許があればでも良い」はあまり良い考えではないことを説明しました。しかし、例えば「オンコール対応できる看護師が良いよね」というような会話があっても看護師像が共有できているとは言えません。図にあるように1人はオンコールできる=臨床経験が必要だと考えていたり、別の人はオンコールできる=独身の看護師と考えているスタッフもいるかもしれません。ペルソナを作成することで、事業所内での採用候補者に認識を一致させることに役立ちます

PDCAが回しやすい

共通認識を持つだけでは採用には至りません。その後に採用活動のPDCAをまわすことに意味があります。PDCAとはPlan→Do→Check→Actionのサイクルのことです。ペルソナを持つことはこのPDCAが回しやすくなることに繋がります。採用担当者不在や予算など、足りないことの多い訪問看護事業所が「採用を偶然や運にしない」ためには、意図のある計画や、的を絞った改善が重要になります。

ペルソナがあることで、まずは求職者が採用までの体験を設計する際の明確な基準ができます。採用をしたいと思うときに採用担当はSNSや勉強会の開催など様々な方略を考えますが、候補者が定まっていないとチグハグな方略になっていることがあります。例えばベテランが欲しいのにinstagramで投稿したり、訪問看護未経験者を採用したいのに在宅看護×緩和ケアなど訪問看護の経験のある方向けの勉強会を開催したりなどです。また、単発だけではなく複数の方略が一本の道筋になっていないことも多いものです。

一本の道筋のような体験を設計することができれば、採用活動が上手くいったとき、上手くいかなかったときに、何が原因なのかペルソナという軸があるため振り返ることができます。instagramが有効か?ではなく、ペルソナにとってinstagramは有効だったか?などと、ペルソナを持つことは採用計画の評価の基準にもなるのです。

人を貯めるのではなく、流すことをしやすくなる

私は良い組織とは「人をひたすらに貯める(定着)のではなく、適切に流し(退職)ながら拡大する組織」だと思ってます。人材をプールするのではなくフローの意識を持つ方がお勧めです。

まれに退職率0パーセントを誇る管理者や経営者にお会いしますが、私は訪問看護にとって良い組織は人が辞めない組織ではなく、適切な割合の退職者がいる組織が良いのだと思っています。そのため退職率を設計することも大事にしています。この退職率が計画よりも下がった時は「辞めれない/辞めさせない組織」や「法人と相性が悪い人がとどまりコミュニティが不健全化する可能性が高い」と思っています。

このように考える理由には以下のようなものがあります。

  • ライフステージやキャリアステージの変化全てに、現状の訪問看護の組織では全ての人が気持ちよく働ける職場環境は設計不可能。(例えば管理者のポストは1つしかない)
  • ミスマッチしている人材をプールすると組織が邪悪化する。(愚痴、不平不満などが蔓延化する)
  • 環境が人を創るが人は環境を創れない。(組織が一旦邪悪化すると職場改革や改善では修復不可能)
  • 健全な放出は健全なアルムナイ(OBOG会)を創り、リファラル(縁故採用)に効果的となる。

ペルソナを設定することは、働いているスタッフを流す、つまり次のステージを応援する時に役立ちます。例えば、ペルソナを独身の看護師にしていた場合、その採用のために作った職場環境は、もしかするとママさんナースにとっては働きにくい職場なのかもしれません。
そういった時は「働きにくさもあるのに、頑張って働いてくれてありがとう」と感謝を伝えたり、働くことが難しくなったら働きにくさは謝罪しつつ「もっとニーズにマッチした職場はあるかもしれないね」と卒業を促す時にも役立ちます。大事なことはスタッフを辞めさせなかったり、囲うことではなく、スタッフに気持ちよく働いてもらうことだと思います。そのためには誰が気持ちよく働ける環境にするかを考える必要があり、ペルソナの設定が役に立ちます。

ペルソナ設定することによるメリットを実感していただけたでしょうか?次回は具体的にどのようにペルソナを作っていくかをお伝えしたいと思います。

【実践】ペルソナの設定